【筋肉のケガは治るのか?】筋損傷の治癒過程と瘢痕化を防ぐ考え方

🔷 筋肉は“ちゃんと”治るのか?

「肉離れをすると、前より弱くなる、癖になる」
「筋肉のキズは治っても元には戻らない」

そんなふうに思っていませんか?

実はこれ、“治し方次第”で変えられる事実です。


🔶 筋損傷の治癒過程は3段階

筋肉がケガをすると、体は次のような流れで修復を始めます。

  1. 炎症期(1〜3日)
     → 壊れた筋線維を片付けるために免疫細胞が集まり、炎症反応が起きます。

  2. 修復期(4日〜3週間)
     → 筋幹細胞(衛星細胞)が新しい筋線維を作り始めますが、
       同時に“瘢痕組織(結合組織)”も作られます。

  3. リモデリング期(1ヶ月〜3ヶ月)
     → 新しい筋肉と瘢痕が再構成され、治癒の最終形が決まります。


🔶 なぜ瘢痕化がよくないのか?

瘢痕とは、筋肉の“空いた隙間”を埋めるコラーゲン繊維の塊です。
これが増えすぎると…

  • しなやかさが失われ、再び切れやすくなる

  • 血流や神経伝達が妨げられ、慢性痛や機能障害につながる

  • 筋力が戻りづらく、パフォーマンス低下や疲れやすさの原因にもなる

つまり瘢痕化とは、「筋肉のふりをした別物」ができてしまう状態なのです。


🔶 多くの筋損傷は“気づかないうちに”瘢痕化している

「痛みが引いたから治った」と思っていても、
触診やエコーなどで確認すると瘢痕が残っている例は非常に多いです。

この状態で運動を再開すれば、再発や慢性化のリスクは高まります。
スポーツ選手でも、一度の瘢痕化が選手生命に関わることもあります。


🔶 なぜ瘢痕化してしまうのか?最大の理由は「初期の固定不足」

筋肉の再生には、“再生する時間と静かな環境”が必要です。

しかし多くの場合で、

  • 圧迫包帯やテーピングだけで済まされている

  • 安静期間が短すぎる

  • 「歩けるから大丈夫」と思って動いてしまう

といった理由により、傷口に刺激が入りすぎて瘢痕ができてしまうのです。

圧迫やテーピングでは、筋の深部までの機械的刺激を遮断することはできません。
本来必要なのは、**「硬性固定=動かないことを保証する環境」**です。


🔶 瘢痕化させないための3つの原則

  1. 初期は絶対安静。炎症を収める。
     → 3〜7日間は機械的刺激をゼロに近づける(理想は固定)

  2. 再生期を支える環境づくり。
     → 適度な栄養・血流・酸素供給をサポート(温熱や軽圧刺激)

  3. “動かす時期”はプロが判断する。
     → 痛みがなくなっただけでは不十分。
       組織が「再生しきったか」を見極めてからリハビリを開始します。


🔷 まとめ:筋肉は治る。ただし、“環境”がすべて。

筋肉は、骨や皮膚よりも再生力の高い組織です。
しかし、その力を最大限に引き出すには、初期の固定と適切な時期判断が欠かせません。

当院では、筋損傷に対して「瘢痕化させず、元の筋肉に戻す」ことを目指し、
固定・処置・リハビリのタイミング設計までを徹底して行っています。

どんなケガでも、“ちゃんと治る”可能性があります。
もし筋肉の痛みや違和感がある場合は、早めにご相談ください。

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