柔道整復とは「細胞をデザインする仕事」である
ケガを治す。
それは、骨がつく、靱帯が修復する、関節が動くようになる——
確かにそうだけど、もっと深く言えば、それはすべて「細胞の営み」で起こっている。
柔道整復とは、その細胞たちが働きやすいように「環境を整え」「時期を見極め」「適切な刺激を与える」仕事だと、私は考えています。
■ 整復とは、細胞の足場を整えること
骨折や脱臼の整復操作。
私たちは骨を戻す。でもその本質は、細胞外基質(ECM)を正しい位置関係に戻すことにあります。
それによって、炎症細胞・線維芽細胞・骨芽細胞などが「ここで働けばいいんだな」と理解し、必要な修復活動が始まります。
いわば、整復は細胞たちの作業場を整える作業なんです。
■ 固定とは、「静かな修復環境」をつくること
受傷初期には、あえてメカニカルストレス(機械的刺激)をゼロに近づけます。
これは、細胞が集中して働けるように、余計なノイズを遮断する期間。
ギプス固定はただ動かないようにするためのものではありません。細胞の活動を妨げないための空間管理なんです。
■ 血流、浮腫、反応熱——視診・触診・エコーで「細胞の声を聞く」
修復が進めば、炎症が引き、VEGFの作用で新生血管が形成され、血流が戻ってきます。
私たちはそれを、視診・触診・超音波エコーで読み取る。
その情報から「そろそろ細胞たちが刺激を求めているな」と判断できる。
つまり、細胞の“やる気”を感じ取っているんです。
■ メカニカルストレスは“指示”であり、“教育”である
タイミングを見て、他動運動、荷重、ストレッチ、筋収縮刺激などを少しずつ入れていきます。
それはただのリハビリじゃない。細胞に向けた“働き方指導”なんです。
やりすぎれば壊れるし、少なすぎればサボる。
適切な強度・頻度・方向性でストレスを与えることが、正常なリモデリングにつながる。
柔道整復師の技術とは、その加減を見極める“感性と知性の融合”だと思います。
まとめ:柔道整復は、時間軸と生物学を味方につける仕事
整復も固定も、運動療法も、テーピングも、治療器も——
ぜんぶ手段です。大事なのは、「今この細胞たちに何をしてあげるべきか」という視点を持つこと。
私たちは、ただ痛みを取る職人ではない。
“細胞の再建をデザインする”治療者であるべきだと思うのです。